白兎を追いかけて | ナノ





休み時間、お手洗いの帰りに不運にも、最悪の光景にバッタリと遭遇してもうた。
それは、女の子が蔵に告白している真っ最中の現場。あぁ、ツイてへん。

蔵がウチと付き合うとるとき、そら告白はされていたけど控えめやった。せやけど別れた今。ここぞとばかりの告白のオンパレード。耳にはしよったけど…実際に出くわしてまうなんて……。



「あ、」


気まずそうな女の子。あぁ、この子、知っとる。ウチが付き合うとるときもちょくちょく蔵に話しかけよったっけ。やっぱり好きやったんやな…。

いたたまれない思いで早く通り過ぎようとすると、聞きたくない言葉が胸を貫いた。


「返事やけど、考えさせてや」


………え?


蔵が、告白を断らなかった。断らなかったということは、悩んでいるということで、あの女の子と付き合うことを前向きに考えているということ。

蔵が、ウチ以外の人と付き合う?



「………っっ、」

呼吸の仕方を忘れてしまったかのように、もがく。平静を装った後ろ姿を向けて、歩む。

そらそうや。蔵にやって、ウチ以外の女の子と付き合う権利はあるに決まっとる。


もしかしたら、蔵はまだウチのことを忘れられへんやないのかって。戻りたいって思ってるんやないのかって。半ば期待してたんや。

…ちゃう。蔵は、前に進もうとしとる。




「げげげげんや゛ぁ…」

「うぉ!柚!おまえなんっちゅー酷い顔してんねん!」

「ううっ…元からやもん…」

「あ、そか」

「死なすど」



そしたらホンマのホンマにお別れやな。



共に堕ちませう
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