白兎を追いかけて | ナノ





駄目や、なに考えてるんウチ。

好きなのは蔵ノ介な筈なんに、地球がひっくり返しても変わらん事実なんに、キスをしたあの日から…光くんのことばかり考えている。


光くんの言動が今でも信じられへん。蔵への『好き』の気持ちより、光くんへの『どうして』の気持ちが勝っているなんて。

一時的なことや、…大丈夫。もう一時すれば昔みたいに元通りに戻れる筈。
洗面台の鏡の前でそう決意して、家の扉を開けた。



………あれ?



「イケメンの蜃気楼が見える」

「朝っぱらから絡みにくさ全開やな自分」


家の前にいるのはウチの大好きな人。彼がいてくれればご飯4杯はいける、あ、5杯目もいけそうや。
そんなイケメンオーラ垂れ流しの白石蔵ノ介がいた。


「酷い彼氏紹介やな…俺はオカズか」

「へへ、ごめんしゃい」

「まぁええけど」


そう言って頭を掻く蔵の髪はいつもより跳ねていなかった。
髪跳ねのない蔵って…なんか、絡みやすそうなイケメンやな。優男度が50アップしとる。


「…一緒に学校行こか」

「うん…あのな、もしかしてやけど、急いで来たん?」

「ん?まぁまぁやな」


…いつものように完璧に髪の毛セットしてへんくせによう言うわ。ウチやから分かる。蔵の些細な身なりの変化にも。
蔵の性格上、完璧やないなんてあり得へんのに……。


「…おおきに」


たったこれだけで、好きが込み上げて溢れてくるんやから誰にも入り込む隙なんてない。せや、ない筈や。



聖者の真っ黒な嘘
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