海に行ったあの日から、柚は積極的になったと思う。
それは俺にとって多いに喜ばしいこと。
やって、大好きな子が求めてくれてるんやで?
「蔵と早く、一つになりたい」
長く激しいキスをしたあと、トロンとした虚ろな瞳で柚は言う。
…っ、あかんわ。
目の前の大好きな子を襲ってまいたい衝動が駆け抜ける。
めちゃめちゃに壊して、俺という証を刻み込みたい。
そんな想いを制御するのはギリギリの理性と柚の必死な表情。柚を見てたら分かる。俺に言えない何かがあるんやろう。
「柚…、」
「蔵、大好き大好き大好き、…大好き」
「そない懸命に言わんでも分かっとるで」
「早よ、ウチ全部が蔵のモノになればええて思っとる。心はもう蔵のもんやから、早く…身体も持って行って」
「ハハ、学校ではできひんこと分かっていいよるんやろ。柚も恐ろしいやっちゃ」
柚は俺に頭を撫でられるのが落ち着くから好きやと言っていた。せやからいつものように、優しく、優しく、寂しげな頭を撫でる。と、
柚の肩がぶるると震えた。
「……柚?」
「……どこにも行かへんよね?蔵は、ずっとウチの隣におってくれるんよね?」
なしてそない苦しそうなんやねん。
シャツを掴んで胸に顔を埋める姿が、愛しいと同時に心配で堪らなくなる。
なぁ柚、おまえは何に怯えてるん?
「財前と…何かあったんか?」
「……っっ!」
昨日から柚の様子がおかしいことに、気付いとらんとでも思うてん?
君の嘘を僕は信じる
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