白兎を追いかけて | ナノ

それはとある日のこと。


「白石くんとは、もうヤった?」


親友である優衣の一言に、ウチは食べかけの苺つっぶつぶポッキーを落としてしまった。

だって、あまりにも唐突で、


ガタガタッ!ガターン!


…恥ずかしくって。




「っちょ!ななななななに言うてんっっっ!」

あまりの動揺に、立ち上がった途端椅子さえも転げてしまった。

顔は真っ赤、そして超必死。


遠くに座っている蔵にめちゃくちゃ不思議そうに見られた。



「…うっわすごい反応」

「ちょ、蔵に聞こえてたらどないすんの!」

「大丈夫やて。
あんたの声ん方が百倍でかかった」

「あーもう、心臓に悪いわ」


あとから絶対聞かれるんやろうなぁ。

なんかあったんかー?って。

なんて誤魔化そうか。ウチ嘘をつくの苦手やから、バレてまうかも。

うわっ恥ずいわ無理ー…。




「その様子じゃシとらんのやろ」

「っ、だから、ヤるとかスるとか言わんといて」

「ほんならセックス」

「うっ…生々しい」


そんなアダルトな言葉聞き慣れてないんやから、言わんといてほしい。

片手でほっぺを触ってみると、尋常じゃない程熱かった。



「多分白石くん、相当我慢しとるんやない?」


え?蔵が我慢?

「いやまさか……」

やって蔵はウチを抱き締めて、幸せーって言ってくれるんやもん。

「やってあんなに柚のこと好き好きなんやで。身も心も俺のモンにしたいーって思ってる筈や」


「蔵は、優しいもん」

そないなこと思ってへん。…筈。


「せやかて…白石くんも男なんよ?」

「蔵は蔵や」


「健全たる男子は大好きな子がおればセックスしたいて思うもんなの」

「う、嘘やん……っ」


蔵は男の子やけど違う。

誰よりも優しくて、ウチのことを一番に考えてくれる。

……やからかな?

せやから、思うてても口に出さんだけなんかな。


(ほんまは…思ってるのかな。)


「柚はセックスしたいて思わんの?」

「ウチは、蔵が抱き締めてキスしてくれるだけで…充分」


そうしてくれるだけで、胸がいっぱいやもん。



「白石くんは違うやろなぁ」

「一緒……やもん」

「聞いてみ、それが一番やろ」


っっっ!え?

蔵に直接聞かなあかんの!?


「むりむりむりむり!」

恥ずかしいに決まっとるやろ!


「聞かなあかん。柚は白石くんの彼女でしょーが」

「せ…せやけど、」


中学生がセックスについて彼氏と語らなあかんの?

ちょっと早いて。
絶対早いて。

まだ蔵とは中学生らしい年齢に合った交際を……―、



「聞かなあかんで」


「…………はい」




一グラムの恋砂糖
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