「ぎゃーーっ!」
四天宝寺の校舎の一角にて、決して上品とは言い難い声が上がった。
こんにちは、お久しぶり?でもないですね。
花風柚でござります。
只今ウチは愛しの白石くんと愛の逃避行、またの名を鬼ごっことやらをしています。
そしてさっきの悲痛な叫びから、ウチは捕獲されてしまったことが察せるでしょう。
「やっと捕まえたわ、柚」
ぎゅっと抱きしめられ拘束。
耳元で名前を囁かれ思わず身震いした。
「は、離れてくれへんかな〜…、白石くん」
「離さんわ。ちゅーか白石くんてなんやねん。なして名前で呼ばんの」
「…深い意味はございませんが」
「いつものように蔵ノ介って呼んでや」
「離してくれたらええで」
人気がないにしてもここ一応学校なんやけど。公共の場やねん。
(それに……、蔵は。)
「蔵ノ介って呼んでくれんと離さん」
あ、絶対蔵、拗ねてんな。
口がむぅーってなってるもん。
ワンコみたいやなむっちゃ可愛い。
ほんのちょっと、いじめたくなった。
「……白石くん」
敢えてそう呼ぶと、蔵の表情が豹変した。
さっきまで寂しげな表情だったくせに妖しい笑みを浮かべている。
(…やばい)
どうやら蔵のスイッチを押してしまったよう。
蔵のスイッチがオンになるのは、ワンコが狼に変わることを意味するのだ。
続く恋のものがたり
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