白兎を追いかけて | ナノ

―――…


ピヨピヨ、ピヨ。


小鳥の囀りが心地よい。

(注※仁王ではございません)


今日は、すんなりと目が覚めた。

低血圧やから朝はめっきり弱いっちゅーのに、…むっちゃ元気なんやけど。


清々しい、朝や。

なんか、ええことでもあったっけ?


昨日余りでもらったぜんざい、おいしかったなぁ。一人で食べよったら光くんにむっちゃ怒られたけど。

それやっけ?いや、ちゃうなー。


なんかもっと、世界が一変するような嬉しい出来事があった筈。


(?)



あ、そういえば、昨日蔵と……。



「………。」



蔵、と?


あ。


昨日の出来事を一つ一つ思い出すと、恥ずかしさのあまり高温度の熱に襲われた。


「うぎゃ―――っ!」


そうやった!

つつつ、ついに蔵へ想いが通じて…ほんで…、ウチ、蔵の彼女になったんやった。



(あわわわわわ、)


か、か、彼女?

ウチが、蔵の彼女?



「……カノジョ」


呟いてみると、現実味を帯びて余計恥ずかしくなってしまった。

鏡に映るウチの顔は真っ赤っか。


(…って朝からウチはなにやってんねん)


今日は文化祭二日目。つまり最終日や。

ウチの中学校での文化祭も今日が最後。




昨日は蔵と想いがすれ違ってたからあまり楽しめんかった。

昨日と今日では全然違う。

ウチは蔵と両想いなんやから。

胸張って蔵の横におってええんやな。



(今日はとことん楽しまなあかんなっ)



制服に着替えて準備完了〜。

全身鏡を横切る際に、鏡に映るウチを見て、ふと思った。



そういえば蔵、ポニーテールの似合う女の子がタイプって言いよったよな………。


とりあえずやってみるだけと言い聞かせて、トップで結んでみた。


(……………。)

鏡に映るウチと睨めっこ。


似合ってるっちゅーか似合ってへんっちゅーか…どちらでもない。

いや、なんか…、フツー。



どないしよ。いつも通り下ろして行こうか。
それともこのまま結んで行こうか……。



……やっぱ、外そう。

付き合い始めたからってむちゃくちゃ張り切っとる彼女て引くし。

それに…ウチにはこんな、女の子らしいことは似合わんわ。



外そうと決めて、手をかけた。


……けど、

(やっぱり…学校に着く直前に外そう)



もうちょっとだけ。

蔵に見られる前に、外せばええやろ。




…なんてウチは、考えていた。




陶酔感の中で君を見た
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