白兎を追いかけて | ナノ

―――…


蔵と佐倉さんが抱き合っている姿は、嫌って程脳内にこびりついて、離れてくれなかった。


考える度頭が痛い。


いつか蔵に彼女が出来て、祝福できるやろうと思っていたウチは、何も分かっていなかったよう。


「柚、元気出し!」

「ぉわ、…優衣ちん」


励ましのど突きをして頂いたけど、やっぱり元気が出ない。

やってウチは、蔵に謝ることすら出来ていない。
昨日の勢いも、二人が抱き合う姿を見ただけで沈没。それはもうタイタニック号のように。



「今日は待ちに待った文化祭やで?」

「ウチは待ちに待っとらん。やって蔵がご奉仕する日なんやもん」

「やからあれはわたしが言い過ぎたって…。ただ女の子たちと仲良く喋るだけやって」


「仲良く喋る……はぁ〜〜…」


「……いや、なんかもうとりあえず謝るからさ、だからそのテンションどうにかして。すごい絡みにくいねんけど」


そういえば、絡みにくいって昨日の光くんも言ってたな――。

テンションが低いウチは絡みにくいんか。新たな発見や。



っちゅーわけで、本日は四天宝寺のビッグイベント、文化祭や。


文化祭一日目。


廊下も教室もみんなが一生懸命に飾り付けをしていて、むっちゃ可愛らしい。

ほんで男子テニス部は、ホストクラブをやるみたいです。


「ほな、行こうか」

「え?どこに?」

「決まってるやん、ホストクラブ」

「え!?は!?無理!」


い、行けるわけないやろ!

蔵と顔合わせられんっちゅーのに。


「わたし一氏くんと仲良くなりたいもん。せやから行こ」

「あー…まるっきり私情ですか」

「グズグズしてたら順番待ちになってしまう。ほら行くでー」

「や、だからちょ……!」



ズルズル引っ張られ、ウチらはテニス部が開いているホストクラブに向かうのやった。



君の涙が墜ちるとき
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