白兎を追いかけて | ナノ

薮内くんは真っ直ぐに想いをぶつけてきてくれる。

ウチには持ってないものを、薮内くんは持っているんや。

(その勇気は一体、どこから来るん?)


好きな人の前で想いを伝えることは、どないに勇気のいることやろう。誰もがきっと、不安でたまらない筈やねん。

ウチは、震える口を開いた。


「ウチ…蔵のことが好きやねん。やから、薮内くんの告白には、」
「今は、言わんといてくれるか?」


(………え?)


「振られることは分かってんねん。…分かってて、告白したんやから」


顔を上げるとそこにはやっぱり寂しそうな薮内くんがおって、

「今は、友達になってくれるだけで満足や」


ズキン。

自分の好きな人が、違う人を見ていて。
それ承知で想いを伝えるのは、とても、とても――…。


(…悲しい)

…やけど、彼は笑っていた。

「強いんやな、薮内くんは」


振られることにビクビクして、一歩も踏み出せないウチとは大違いやて。


「ははっ、ちゃうよ」

…なに言うてん。ウチの百倍は強いねんで。


「強くないと、告白しきらんやろ」

「強いとかやくて、俺は花風と仲良うなりたいから手紙も書いて、ここに呼んどるんや」

強いんちゃうで、なんて薮内くんは言っていた。


ウチはなんで、告白しきらんのやろ?


振られるのが恐いから?

傷付くのが恐いから?

関係が崩れるのが恐いから?


薮内くんのように純粋な気持ちはそこに含まれとるんやろうか。
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