白兎を追いかけて | ナノ

それから薮内くんといろいろな話をした。

一組ではどうだとか、二組はこんな所が楽しいとか。たこ焼きのおいしい場所とか、よく遊ぶ場所とか。

初めて喋ったんに、緊張感はなかった。
まるで昔から友達やったんやないかって思うほど、薮内くんは喋りやすい人やった。


「薮内くんは、ウチの…どこがええん?」

「ははっ、それ聞くん?」

「やってウチ、スーパー少女って言われるぐらいなんやで?」

「そうやんなぁ。超有名人やんな」

「いや、ちゃうくて。ウチ、謙也に絶対に好きにならん女の子ナンバーワンに格付けされるほどなんやで」

「ははっ、大袈裟やなぁ。ほんま忍足と仲良いよなー」

「謙也はウチの一番の理解者やから、ウチがどんな落ち込んでるときも傍におってくれんねん」

「ええ友達を持ったなぁ」

「うん、ほんま」

「…で、白石は?」


「え?」

「白石はどんな存在?」


ドクン、と心臓が鳴った。

核心を突かれたようやった。


「そりゃ…蔵は、いつも一緒で、優しくて、それで…」

「好きなんやろ?」

「!」


違うって、言いたいんに。

薮内くんの視線が真剣過ぎて、反らせない。嘘つけれん。


「忍足が一番の友達。白石が一番好きな人。花風見よったら分かるわ」


「…薮内、くん」

「俺な、花風が楽しそうに笑う姿に最初惹かれてん。いつやったかな、花風が白石の自主練が終わるのを待っとるとき、花風の表情を見たら嫌でも気付いたんねん」


気付いたって…、


「なにに、なん?」


薮内くんは悲しそうに、やけどやっぱり可愛く笑った。

それが一段と切なく感じる。


「白石のこと、本気で好きなんやなって」

どんなに否定したって、無理なんだって悟った。

「……あ、えっと」


なんでウチは、胸を張って蔵が好きと言えないんだろうか。

薮内くんはこんなにも真っ直ぐ想いをぶつけてくるのに。
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