白兎を追いかけて | ナノ


連れて来られたのは近くの非常階段。

怖そうな人を想像してたんやけどな。


(全然優しそうやん。)


流石サッカー部。爽やかだなー…うん。

「俺の顔、何か付いてる?」

うわ、ジロジロ見てたことバレちゃってる。

「え、いや…爽やかな人やなーって見てました」

「ははっ、ほんまに花風は面白いなぁ」

あ、笑った。

靨(えくぼ)が出来る薮内くんの笑顔はとっても可愛いかった。

こらモテるわ。

優衣が言ってたことに納得。


「お、おおきに」


なんかキラキラしたものが見えるんやけど。爽やかさが留まることを知らんな。


茶髪でキラキラしたオーラを放っている、それが薮内徹平くん。


「手紙、見てくれた?」

「あ、うん、勿論!ラブレターなんて初めてやし、むっちゃ驚いてん」


「俺もラブレターなんて書いたの初めてやねん。緊張したわー」


「おかげで眠気が一気に飛んでいったで」

「ははっ、眠気覚ましちゃうわ。直接告白したかったんやけどな、花風って白石とか忍足に守られとるからなぁ」


近寄り難くて、と続ける薮内くん。


え?蔵と謙也に?

…なーに言うてん。


「守られてるんちゃうて。蔵はまだしも、謙也がウチを守る姿なんて想像出来んわ」
っちゅーか毎日のように攻撃を受けていますねん。


「周りから見たらそうなんやって。せやから花風と仲良うなりたくても近付けんってヤツたくさんおるんやで」

「えー…嘘やん」

…やってウチやし。

「謙遜してん?」

「ちゃ、ちゃうて!…やってほら、ウチ、全然可愛ないし」



「なにいってん。みんな花風のこと、可愛いって言ってるで。ちなみに俺も思っとるんやけどな」


「え゛!な、なに言うてん」

ウチが可愛いて?

(…1コケシやな。)


「ほんまやて。手紙にも書いてたやろ。元気で可愛いから好きやーって」

「っ、ちょ!恥ずかしいからそない簡単に言わんといて!」


なんで簡単に好き、とか言えるんやろ。

ウチは言えないことに、伝えれんことにこないに悩んでんのに…。


(すごい、わ。)
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