白兎を追いかけて | ナノ

『花風柚さんへ

こんにちは、突然すんません
三年一組の薮内言います

柚さんのこと、前から元気で可愛い子やなって見てました
ずっと見てたら、好きになってました

よかったら、友達からでいいんで仲良うしてもらえんですか?

薮内徹平より』


…ゴクリ。

ら、らぶれたーだ。

もうラブレター(仮)やなくてラブレター(真)やないか。

ラブレターなんて、初めてやから。

ど…どないしたらええんやろ?



丁寧な文字から真剣さが伝わってきた。

好きって、好きて書いてあるやん。


うわー…なんか恥ずかしいわ。
でもちょっと嬉しいねんけど。


薮内徹平て誰やろか?

ウチ、男の子はテニス部とクラスメート以外知らんもんなぁ。


「一人コソコソなにしてんねん」

「!」


ガタン!バタバタ、ドタッ!


「…おはよ、蔵」

「…………。」


ラケットバックをからって、後ろから覗き込むように立っている蔵。
ほんま、神出鬼没とはこのことや。


「おはようさん。…なに隠してんねん?」

「ぴ、PTAの手紙やで」

「へー、そうなんか」


うわ〜よかった、あっさり騙されてくれたみたいや。

よく分からんけど、蔵には見られたくないって思ってしまった。

ラブレター貰ったって、知られたくないと強く思ってしまった。



「あ、空飛ぶたこ焼きや」

「え!?どこやねん!」


ヒョイ。


窓の外へと気を取られたウチ。あっさりとラブレターが蔵の手に渡ってしまった。


(なに騙されてんねん!ウチのアホ〜〜〜っ!)


蔵はラブレターを取り上げて、ウチに届かないように上に掲げた。


「ちょ!返し!」


ウチは見られたくない一心で蔵の胸板を叩く。

効果ナシみたいやから、お次は背中に飛び乗った。

うっわビクともせん。
蔵の逞しさと頑丈さに驚くウチがいた。


「ラブレター、なぁ」

「返してや〜!」

中見るとか、絶対アカン!


「ホイ」


(……え?)


封筒の宛先を確認するなり、あっさり返されたラブレター。


「あ…おおきに」


思わず、拍子抜けしてしまった。

「柚は、モテるからなぁ」


え、いや、あんたにだけは言われたくない台詞なんやけど。

っちゅーか、あっさり返すし、無表情で言うもんやから、こんなラブレター興味ないって、ウチにはさっぱり興味ないって言われてるみたいで…、少し悲しい。


当たり前…なんやけど。
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