白兎を追いかけて | ナノ

月の光を浴びる彼女は、紅い着物の引き立てもあり、息を呑むほど美しい。

その距離、数センチメートル。

透き通る白い肌もリップが塗られたその唇も、触れたくてたまらない。

俺を見つめるその瞳の純粋を、壊したくなる。


抱き締めたい。

キスしたい。

衝動を抑えて、壊れモノのように優しく、やんわりと柚の頭を撫でる。


今は、これだけやけど

(いつか…絶対に、)


君を手に入れて見せるから。

そのときは…覚悟しとき?



「綺麗やで、柚」


初めて柚の着物姿なんて見たけど、似合いすぎて驚いたで。


「な…に言うてん。そんな冗談、ウチ、アホやし、本気にしてしまうやろ…」


「本気やて。本気で言うてるんや」


柚の顔が耳まで赤らむ。
柚は照れたらすぐ逃げるからなぁ。

木に追い詰めて、両手を掴んだ。

これで、逃げられんな?柚。


「ち、近いっちゅーにん。ちょ、離し!」

アホ、離さんで。


「いやや、柚はいつも逃げてしまうんやから」

今日は、逃がさへん。

「やって、ウチ…今、むっちゃ変な顔してんやろ。やから、見らんといて……」


変な顔やて?


(なにいうてん。)


潤んだ瞳に上目遣い。

確信犯やろ。

(誘ってるんか?)


「綺麗やて、言うたやん」

「そんなん…嘘、」


泣きそうな表情したってな、逆効果やで、柚。
柚の一つ一つの行動が俺を煽るんやから。


もう、ええよな?
溢れ出しそうなこの想い。

伝えて…ええよな?


「柚、聞いて欲しいことがあるんや」


「うん、…?」


どうしても伝えたい想い。

キミに、聞いて欲しい。
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