「花風さんと間違えてしもたみたいや」
「ほんま、ごめんなさい!」
「…ご、ごゆっくり!」
さくさくと雪を踏む音をたてながら去っていく部活動生たち。
っちゅーか陸上部部長さん、ごゆっくりってなんやねん。
強気に見えて…結構ウブなんやなぁ。
「花風?もうええで?離れても」
「………。」
っ、ぎゃ。
しがみついた腕を離す。
ばれへんようにと白石くんにむっちゃ強く抱きついてたことが今さら恥ずかしゅーなって来た。
「ほんま…助かったわ。おおきに、な」
「ええよ。まさかこんなに上手くいくとは思わへんかったけどなぁ」
(それは多分―…白石くんやから上手くいったんやって)
明日からは白石くんと花子さんの付き合っとるっちゅー噂が四天宝寺中に広がっとるんやろな。
「もう遅いしなぁ…送るで?」
「……ほ、へ?」
わっつ?ぱーどぅん?
今、このプリンスはなんて言ったんや。
「プリンスやないわ。花風を送ったる言ったんや、家どこなん?」
え…え、今日喋ったばっかのウチを?
「××駅の近く…やねんけど」
「お、俺の家のご近所やないの。ほな行くで」
笑顔で立ち上がる白石くんはこの上ないジェントルマンやった。
(…こん人何者なん?)
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