去りゆく柚を見送った後、白石はラケットを担いだまま振り返った。
「今回はほんま迷惑掛けたと思っとる。
すまんかったな、謙也、…財前」
「ほんまですわ。むっちゃええ迷惑でした」
「…おい財前。まぁよかったで、仲直り出来て」
「…俺な、今回の件で決めたんや」
「ん?なにをや?」
「柚を捕まえる」
「……は?」
「柚を追いかけてもな、俺の腕をすり抜けていくねん。前はそれでええて思っとった。せやけどもう無理やねん。全力で俺はアイツを捕まえる。逃げれへんぐらい酔わせたる」
白石はこの上なく強く、けれど優しく、言い放つ。
堂々とした白石の姿に一瞬唖然とするも、関心したように頷いた。
「………ほーう」
「…そうですか」
財前は顔を背けていて表情はよく見えなかったが。
(なーんでお互いの気持ちを俺らが知っとるんねん。好き合っとるなら早よくっつけっちゅー話やろ。この鈍感同士!)
さまざまな想いが行き交い
(俺は柚先輩が笑ってればそれで……、)
いつかは、重なってしまう
(柚は誰にもやらん。意思表明やない、宣戦布告や)
そのとき僕らは笑っていられるのだろうか?
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