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テニスコートの傍らにて、のほほん(?)と会話を交わすのはヘタレと毒舌。
「柚先輩と白石部長、仲直りしたみたいでよかったですわ」
「ほんまほんま。やーっとお騒がせコンビが落ち着いてくれたっちゅー話」
柚と白石なんやから、まぁ心配いらんて分かってたけどなー、なんてぼやくヘタレこと忍足が呟く。
そこに毒づく後輩、財前。
「よく言いますわ。柚先輩が帰って来ぃひんかったらどないしよう〜!って昨日泣きわめいてましたくせに」
「な、泣いてへんで!」
「さぁーどうやか。目がうるうるしてましたけど」
「気のせいやろ!っちゅーか、柚が山で遭難するわけないやろ!アイツは山の主になって帰って来るわ」
「うっわ柚先輩に今のチクったら謙也さん跡形もなく消されるんやろうなぁ」
「楽しそうに言うな。リアルやから、ほんま!」
ふぅ、と忍足は息を吐いて、財前をじっと見つめた。
「キモイっすわ。すんません俺には小春さんらみたいな趣味は…」
「いや、断じてそっち方面やないっちゅーにん」
「…じゃあなんですか」
「いやー、まぁ…。白石と柚の仲に亀裂が入っとったまんまの方が、財前は都合がよかったんやないかって思うねんけど」
「………はぁ?」
「財前が白石を目覚めさせたようなもんやで。そないなキューピットして、財前は、財前一人は報われんやないか」
「…なに勘違いしてはるんですか」
「やって、財前…」
「言っときますけど、俺は柚先輩のこと、恋愛的に見てませんから」
「財前、」
「俺は、柚先輩が笑っていればそれでええと思ってるんです。楽しそうに謙也さんいじってれば、それで…ええんですわ」
「財前…、どさくさに紛れて最後の余計や」
「…。柚先輩は大切な先輩で仲間、それだけですわ」
「そう、か」
どこか不服そうに頷く忍足。
それは、忍足が財前の視線の先を追っているから、普段は見せない表情を柚に見せるのを知っているから、だから拭いきれない想いがあるんのではないかと疑ってしまうのだ。
「柚先輩好きになるなら、クマを好きになった方がマシですわ」
「…激しく同意や」
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