白兎を追いかけて | ナノ

朝の日差しが眩しくて、うーんと背伸びをする。

蔵と仲直りが出来たおかげで昨日の朝よりも心は断然軽い。
軽すぎて、今ならジャンプをしたらお月様まで届きそうやわ。


「よっしゃ!今日も一日頑張らな!」


昨日はみんなに迷惑掛けたんやから、今日は頑張らなあかん。

みんなのサポートをビッチリやるんや!

(なんったってウチはスーパー少女!)


拳を強く握り締め、意気込んでドアを開く。

と、バッタリ。


「あ」

「お、」


タオルを肩にかけ、早くもジャージ姿の蔵がおった。

昨日の今日やから、なんか…恥ずかしいわ。


「おはようさん、柚」

「おおおはよう」


なに緊張してんねん、なにどもっとるんねん。
ウチは浪速のスーパーヘタレか!っちゅー話やろ。

だけど、蔵が挨拶してくれたことが、昨日のことはほんまやったんやって物語っているようで、安堵とは違う、喜びを感じた。

「は、早いやん。どうかしたん?」

「ちょっと走って来たんや」

「蔵らしいなぁ」


努力の上に努力を重ねる。
さすが、四天宝寺が誇るバイブル。

ウチの大好きな蔵や。


蔵は台所までついてきてくれて、ウチが朝ご飯の準備をするのを手伝ってくれると言ってくれた。
うわーもうむっちゃ優しい。

ここのところ冷たくて恐くて、しかしそのイメージをいとも簡単に払拭してくれた。

「昨日の傷、大丈夫なん?」

「ん?あー、うん。全然大丈夫やで」


っちゅーのは嘘。

手を洗うときもむっちゃ染みるし、腕も足も動かすだけで痛みが走る。


「ほーん…」

「昨日、蔵が手当てしてくれたやん。せやから全然大丈夫やって」

「ほんま?」

「ほんまにほんま」


昨日、蔵が傷の手当てをしてくれて、傷を見ながらウチにずーっと謝りよった。

そんとき言った言葉が…、

「柚を傷つけるヤツは許さんわ。せやから俺は、今回の俺を絶対許さん」

「蔵……、」


そんな、自分を戒めんでええのに。
傷を負ったんも、ウチの不注意なんやから…。


「痛々しいわ」

「そんな、見た目ほど痛くないねん」

「ごめんな、女の子が顔に傷なんて、許せへんやろ」

「う、ウチは別に、女の子って柄やないやん。せやから、全然……」

ペロリと、舐められた。


Where?


…傷口。


少し、染みて。
だけど甘かった。

蔵の舌がとってもエロい。


「………っ」

怖かったけど、優しくて。拒むことを一切せずに、ウチはひたすら受け入れた。


(って恥ずかしいわ!なにしてんねん昨日のウチら)


思い出し赤面をするウチが一番恥ずかしい。


「あ、せや、柚」

「なな、なん?」


平静を装え、ウチ!


「今日一緒に温泉入ろか」

「………え゛、」
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