「柚の気持ちも、聞かせて欲しい」
「………。」
「あ、ええねん。謙也とか財前の方が好きなら、それでも。ってやっぱり嫌や!譲れんわ!」
「………。」
「今の柚の気持ちを、聞かせて?」
「すぅー…」
「あ、すぅーでもええねん。すぅーでも、って、は!?」
目を瞑り、意識を手放して寝息をたてる愛しのお姫様。
「……やられたわ」
勇気を出した人生初の告白も呆気なく終わってしまった。
自分と同じ色の髪を、優しく撫でる。自分の胸に体を預けて眠る彼女を愛おしく思う。
いつものぷるんとした唇は、今日は皮が向けて、血が出ていた。
「こんなんなるまで、俺は追い詰めたんやな」
やるせないこの気持ち。
これからちゃんと返すからな、なにがあっても柚を悲しませることはさせんから。
自分にも、他の人にも。
「絶対振り向かせたる」
俺しか見えんよう、柚を好きにさせるわ。
せやから、この反則行為は許してや。
髪に、額に、瞼に、頬に
優しい口付けを。
「いつかその唇も、絶対、奪ったるからな」
そんな白石の姿を知るのは、夜空にきらきらと浮かぶ星と月だけであった。
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