白兎を追いかけて | ナノ


「柚の気持ちも、聞かせて欲しい」

「………。」

「あ、ええねん。謙也とか財前の方が好きなら、それでも。ってやっぱり嫌や!譲れんわ!」

「………。」


「今の柚の気持ちを、聞かせて?」

「すぅー…」


「あ、すぅーでもええねん。すぅーでも、って、は!?



目を瞑り、意識を手放して寝息をたてる愛しのお姫様。


「……やられたわ」


勇気を出した人生初の告白も呆気なく終わってしまった。

自分と同じ色の髪を、優しく撫でる。自分の胸に体を預けて眠る彼女を愛おしく思う。


いつものぷるんとした唇は、今日は皮が向けて、血が出ていた。


「こんなんなるまで、俺は追い詰めたんやな」


やるせないこの気持ち。
これからちゃんと返すからな、なにがあっても柚を悲しませることはさせんから。


自分にも、他の人にも。


「絶対振り向かせたる」


俺しか見えんよう、柚を好きにさせるわ。
せやから、この反則行為は許してや。


髪に、額に、瞼に、頬に

優しい口付けを。


「いつかその唇も、絶対、奪ったるからな」


そんな白石の姿を知るのは、夜空にきらきらと浮かぶ星と月だけであった。
- 59 -


|
戻る
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -