白兎を追いかけて | ナノ

重みと温かさと

(荒い…息遣い)


蔵…なん?
目の前で抱き締めてくれてるんは、蔵ノ介なん?

「むっちゃ、探したわ…ハァ。見つかって…っ、ほんまよかったわ…!」


いっぱい、探してくれたん?
ウチのために、こんな雨の中?


「柚が風邪ひいたら困るわ。早よ帰らなって…、なんやねん、この傷」


ビクッ!

あかん、また蔵怒っとる。

いやや…嫌われるのは嫌や。


「ごめんなさい、ごめんなさい…ごめんなさいごめんなさい」

「なんで謝るん!この傷、転んだん?」

「…ウチ、買い物の途中で蔵からもらった明日の練習メニューのプリント落としてしまってん…それで、」

「…!?まさか、あのプリントを探しよったんか!?」


っっ!
恐い、恐い、恐い。

蔵が恐い。


「ほんま…ごめんなさい。見つからんで、一生懸命探したんやけど、蔵…お願いやから、嫌わんで」


泣きそう、泣きそう。

蔵に嫌われるんが、世界で一番恐い。



「……っ、柚」

「ひっ!」

蔵の掌が、頬に触れる。
一瞬ぶたれると思った。

おそるおそる目を開けると、蔵はやっぱり悲しそうで、ウチがそうさせとるんやと思うと胸が痛い。


「ごめんなさい、蔵」

「柚は謝らんでええねん。謝るんは俺や。こないに柚を追い詰めて、ごめんな」


「え…?く、ら?」


「たくさん傷つけたな、たくさん悲しませたな。分かっとるつもりやったけど、分かっとらんかったみたいや。ほんま…自分が許せんわ」



え?なんで?
なんで蔵が自分を責めてるの?

やって、蔵が怒ってるのも、怒らせてしまったのもウチなんやないの…?
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