彼の手がウチの方へ伸びてくるのに、抵抗はなかった。
「雪、被ってるで?」
雪を払ってくれる手つきは優しい。
このためにしゃがみこんでくれたんやな。
ほんま…、優しい人。
「おおきに」
雪を払われてるだけなのに撫でられているような感覚なのは、きっと白石くんがプレイボーイやから。
(こうやって白石くんは女の子を落としてるんか)
ナチュラルな犯罪やな。
フツーの女の子なら鼻血もん。
…あ、ウチはほら、スーパー少女やから。
「こんぐらいなんてことないわ。…でも早よ帰り?ほんまに風邪ひくで」
「ええもん。ウチ、スーパー少女やから」
「でも女の子は女の子やろ」
「………帰れへんもん」
拗ねたようにムッとして、目線は地面へ。
白石くんは無言でウチを眺めよった。
はよ立ち。そして帰り。
白石くんみたいなキラキラした人、ウチとは世界が違うねん。
「ねぇねぇ!あっちの方から声せえへん?」
「ほんま?ちょ、行ってみよか」
(………え゙?)
いや、ちょ…っ、それはまずい!
どないしよ!逃げなアカン!
「どないしたん?そんな焦って……、」
「ちょ、まずいて。ウチ逃げなあかんねん」
ヤバいヤバいヤバい!
せや、今走り出したらきっと逃げれる。
途中陸上部部長にも追い掛けられるけど…かわせるやろ。
校門に立っとるソフトボール部は………、門飛び越えれば…なんとか!
「ってかみんな部活しろっちゅーにん!」
「は?」
せやせや!ウチ捕まえる時間があるなら練習すればええのに!
「やっぱ花風さんの声した!」
「あっちや!」
ウチの心の叫びが大きかったせいか、部活動生はしっかりと耳にしたようだった。
「花風さん!隠れても無駄やで〜っ」
うぉぉい!その声は陸上部部長さん!あんたには一番見つかりたくないんや!
上級生に捕まると、断りにくいから嫌やねん。
「ウチ行かなあかんから。ほなな、白石くん」
立ち上がろうとした瞬間、腕を掴まれた。
(……?)
どないしたんやと思ったのも束の間。
「じっとしとき」
真剣な表情に言葉を失うと、ウチの体は温もりに包まれた。
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