白兎を追いかけて | ナノ




――ガサガサ、


「どこやねーん!愛しの愛しのペーパーちゃーん」


山に入ること早三十分。

呼んでも返事はあらへん。
…いや、当たり前なんやけど。


「早よ出てこんとウチの堪忍袋の尾が切れるでー。ウチ恐いでー、なんったって四天宝寺が誇るスーパー少女なんやでー」


……、なんか自分で言うたら全く持ってかっこよくあらへんな。

見つからんわ、ほんま。

蔵と距離が出来てから、なんでこう…全てが上手くいかないんやろう。

ウチの世界は蔵中心とでも言いたいんやろ、ウチのドアホ。


「どこに行ったんやー…あ!」


上を見渡せば、木の枝の隙間に一枚の紙が挟まっているのが目に入った。


あれ、やないか?

確信も何もないのに、ウチは一目散に走り出した。

もうちょっと上からやったら、取れる!

興奮して、山の地図から目を離してしまったことが、ウチの大誤算を生むことになる。






「う――…、もう少し…!」

拾った木の枝で一生懸命突っついて、取れないかと何度もトライする。

頑張れウチ、やれば出来る子やんか。

今回もきっと上手くいく筈。

自分にエールを送って、震える腕を一生懸命に伸ばす。


なんでウチの腕は伸びんのやろう。某マンガの主人公のように、びよーんと伸びてくれたらちょちょいのちょいやのに…。

そこらへんに悪魔の実落ちてへんのか。


あ、届いた!


「!?」


しかしその瞬間、悪運にも強い風が吹いた。


紙が、落ちる。

ウチも、…落ちる?



「きゃあああぁっ!」
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