「はい、おばちゃん」
「まいど!」
オサムちゃんに近い店はここしかないと言われやって来ました、山の頂!
あれからオサムちゃんに、合宿の食費が底をついたことを熱狂的に説明すると、彼の薄い財布から福沢様がおなーりーになりました。
オサムちゃん曰わく、どうやらここは山の頂に存在する珍しい村らしく、往復なんと三時間は掛かる!
しかーし!
「…ただいま」
「うぉ!早!まだ一時間半しか経っとらんのに!」
「スーパー少女、舐めたらあかんで」
「なんでや!食料選ぶ時間も、それを持つ持久力も足したら、四時間はかかるやろ!なんでやねん。あれか、宇宙人か!」
「オサムちゃんー、ウチ少女、少女やからな」
「…瞬間移動か。世界滅亡もその内やな」
「………。」
あかん、全く話聞いてないやないの。
(まぁええけど…、)
時計を見ると四時前。
(まだ作るには早い、な)
明日の練習メニューを確認しよう思うて、スカートのポケットに手を伸ばした。
(あ…れ?)
紙がない。
感触がない。
確かに、入れた。
丁寧に折りたたんで、ポケットん中に入れた筈やん。
(ない、ない…ない!)
いくら探しても見つからなくて、買い物袋にも入ってはいなかった。
…嘘やん、ありえん。
無くしてしもたわ。
落とした、んやろうか?
無くしたって、蔵が知ったら…。
(嫌われる。)
絶対…絶対、嫌われる。
ほんまにこいつ、迷惑しかかけんやつやって、見放されてしまう。
(…そんなん絶対嫌や。)
村を出るときには確かにポケットん中にあった。
っちゅーことは山の中?
大丈夫、まだ時間はある。
ちゃんと見つけて、何事もなかったかのようにすればええ。
「ごめんオサムちゃん!ウチ落とし物探して来る」
「用心しぃやー」
絶対、見つけなあかん。
- 52 -
← | →