白兎を追いかけて | ナノ



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―パコーン!


軽快にボールを打つ音が響く。
朝は走り込み、昼は一年生から三年生までノック練習。

いつもは練習メニューについて部長とマネージャーの話し合いがあるんやけど、今日は練習メニューのプリントを渡されただけやった。


「寂しいな」

ほんま、寂しい。


蔵に不必要やと、邪魔な存在と思われてているんやないかって不安になる。


「ほんまアホですわ、白石部長は」

「ひ、かるくん」

「柚先輩に悲しい顔させるんも、そのせいで今日のプレイが絶不調なんも」

「……、蔵は優しいよ」

「ほんま、こないアホみたいに好かれて幸せ者ですわ」

「アホは余計やて」


ムッとして光くんを見上げた。
大きな掌が降ってきたと思った刹那、むにゅっとほっぺたを掴まれた。


「…なにするん」

「なにって、されての通り」

「いひゃいわアホ、離ひなひゃい」


崩れた顔が余計崩れるやないの!
ウチが嘆いたところで潔くパッと離された手。


「もう怪我してもぜーったい手当てしてやんないんやからな」


ヒリヒリする頬をさすりながら光くんを睨みつけると、そこにあったのは彼のとびっきりの笑顔やった。


「やっぱ柚先輩は怒っているか笑っているかがええですわ」


う、わ…。

ほんの少し、ほんとうに少しだけ、ときめいてしもたわ。


やって光くんはいつもツンツンしとるもんやから。時々笑ても、こないに破顔一笑はせえへんもんやから。


「哀しむ柚先輩、見たないんですわ」


こんな台詞、いつもは吐かんもんやから。

「光、くん?」


「先輩は、俺の太陽なんです。せやから、いつも笑っててもらえませんか?」


光くんの一言一言に何度も驚かされて、同時に勇気づけられた。


「ありがとう」
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