「柚先輩」
いつもと違う所。
(それは、白石部長と柚先輩が一緒におらんことや。)
いつも絶対隣だというわけではない。だが、どんなときだって近くにいる。
それなのに今、二人は正反対の場所にいて、一人で朝食をとっている。
(なんかあったんやろうか?)
財前は首を傾げた。
「なんやねん、ヘタレ」
「へへヘタレやない!…それよりも、どないしたん?」
「べーつーに、なにも」
「嘘言うんやめや。そのクマ何なんっちゅー話」
「あー、このクマな千歳が…、」
「お吸い物のクマちゃうわ。柚の目の下のクマや」
(………。)
あぁ、もう。なんでこないに謙也は鋭いんやろう。
「白石となにかあったん?」
「…分からん」
箸が止まる。
「分からん?なんでや?」
「ウチ、知らん内に蔵を怒らせてしもたみたい」
「は…?んなわけ、」
「堪忍、ウチ皿洗いせなあかん」
…食欲がわかない。
立ち上がって、謙也の傍から離れた。
心配してくれておおきにな、謙也。
光くんも、心配そうな視線を送ってくれておおきに。
今はちょっと一人にしてほしいんや。ほんま堪忍。
広間を出る際に蔵が一瞬視界に映る。
胸が疼いて、哀しみが込み上げた。
そして少し、切なくなった。
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