――カポーン。
深夜の11時。
明日の朝ご飯の下準備も完了。消灯時間は過ぎとるし、みんな疲れて眠っとるやろ。
というわけでやって来ました温泉!
むっちゃ広いわ!大浴場やないの!
温泉の入口には「柚入浴中!入って来たヤツは殺す&明日の朝飯抜き!」と貼り紙をしてきたから大丈夫やろう。
「あ、露天風呂あるやん」
オサムちゃんもほんまええとこ連れて来てくれたわ。
露天風呂へのガラス貼りの扉を開ける。
(っ、寒!)
夏やけれど、タオル一枚っちゅーのはさすがに寒いわな。
早く湯に浸かろうと湯気がもんもんと立ちこめている露天風呂へと足を進める。
……あれ?湯気であんまり見えんけど、人影あらへんか?
(猿やろうか…。)
なんったって山やしな。
「…誰や?」
――…え。
湯気が、少し晴れる。
湯気なんて晴れんでも声だけで分かった。
この声は、知っとる。
「蔵……?」
「っ、柚!」
し、しまった……!入浴中やったんか。ウチとしたことがつい…!
「ってなんでまた風呂入ってんねん!」
タオル一枚で隠している体を手で更に隠す。
蔵にこんな貧相な体見られるなんて一生の不覚や!
「か、堪忍な。頭冷やそ思って入ってたんやけど」
「いや、逆に温めよるやん」
「柚はまだ入浴しとらんかったん忘とったわ。ごめんな、すぐあがるわ」
「え、ええねん!ウチ、中の風呂に入るさかい」
蔵はなんやかんや悩んどるみたいやし、お邪魔しちゃあかん。中の風呂に入ろうと、元来た道をくるりと振り返った。
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