白兎を追いかけて | ナノ




「うぉぉぉっ!むむむむっちゃ美味いやんかー!」


和室の広間にて、金ちゃんが雄叫びを上げた。

「ほんま?ありがと金ちゃん」

「柚ちゃんすごいわ!わい、こんなごっつ美味しい料理食べたこんないで」

「大袈裟やな〜、只のハヤシライスやん」

ガツガツと食べ進めるのは、本日の夜ご飯、ウチが作ったハヤシライス。


「ほんま美味いわ」
「さすがマネージャー!」


部員みんなが笑顔で食べてくれて、ほんま嬉しいわ。


「ぎょうさん作ったから、思う存分おかわりしてや〜」

「柚、ほんまええお手伝いさんになれるで!」

「先輩、ええお手伝いさんになれますわ」

「なんでお手伝いさんなん!お嫁さんやろ普通!」


謙也と光くんはおかわりなし。させてたまるか、このアホ共。

そんな中、静かにひたすらモグモグ食べ進めている美男子が一人。


「何杯目ですか、蔵ノ介さん」

「五」

「………。」


…食べ過ぎやろ。っちゅーかなんでこないに機嫌悪いん?


怒ってはるんかな?
ウチなんかしたんやろうか…。


機嫌が悪くなったのは、滝修行の途中からや。


「美味いわほんま。いいお嫁さんになるやろな」

「………っっ!」


いいお嫁さんよりも、蔵のお嫁さんになりたいです!


ってあれ?ウチには怒っとらんのかな?なんかあったんやろうか…?


一瞬、滝修行のときにジャージを持って悲しい表情を浮かべる蔵を思い出した。

あれは…関係ない、のかな?
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