白兎を追いかけて | ナノ


そうや、思い出作らんでどうするっちゅー話やろ!


―スチャッ!


「くらえー!黄泉送り柚特製水鉄砲ー!」


水鉄砲は蔵の顔面に的中!しかし威力は微弱。

なんったって百均やし。


「…なんやそれは!」

「昨日おもちゃ屋で買ってん」

「水遊びする気満々やない!」

「こんなこともあろうかと準備してたんやけど、まさか使うとは〜」


ビビりながらも滝に打たれる謙也の額に水鉄砲を喰らわせると、挑発に乗ったのか追いかけてきた。

水ん中は走りにくくて、せやから水を掛け合ったりして逃げ回って、ほんまにおもろかった。


そないなときに、悪魔の一声。


「先輩、ピンクですか」


(…え゛)


目の前にいるのは光くん。

ウチに掛ける最初の言葉は、89パーセントの確率で良いことではない。


「俺は嫌いじゃないですよ。あーでもやっぱり黒派ですわ」

「あの―…なんについて語られてるんですか光さん」


真っ正面でハテナマークを浮かべるウチに、光くんは無表情で指をさした。


「透けてますわ」

「………。」


(透けてるって…、)


光くんの指先を辿るとそこはウチの胸部辺り。



(………!!!)


「きゃぁっっ!光くんのえっち!どすけべ!変態野郎!鼻垂れ坊主ー!」

「見せてんの先輩やないすか」

「ちゃうわ!アホ!」


薄いTシャツやから透けてしまってるんや。


(ほんまありえん…!)


「ぎゃー、わー、えーん!嫌や嫌やーっっ!光くんの痴漢ー!」

「先輩Cあるんちゃいますか?」

「い、言うなやー!」


っちゅーか興味津々になんで部員ほとんどがこっち見てるん!あんたら全員夕飯抜きや!


そうや、蔵なら……!

蔵なら助けてくれる…!




「あんま先輩苛めたらあかんで、財前」


ふわり、と、上から着せられたのは四天宝寺中テニス部のジャージ。



「謙、也」

助けてくれたのは意外にも謙也やった。
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