白兎を追いかけて | ナノ


とりあえずウチは滝に打たれて風邪を引かんように、ふっかふかのタオルを置いといてやった。

馬鹿は風邪引かん言うけど、念のために…な。



「きゃー!金太郎さんがロッククライミング始めよるー!」

「どないすんねん小春〜」

「ウチに聞かれてもー!」


「師範、滝修行似合いすぎですわ」

「む、そうか?」


「滝に打たれてヘタレ卒業や。逝ってこい」

「うぉい!白石!どこに逝かせるんか、俺を!」


「きゃー!千歳がいないじゃないの〜!」
「どないすんねん小春〜」

「ウチに聞かれてもー!」



…正真正銘のアホやな。

タオル、いらんみたいや。


「柚も滝修行しようや〜」

「するかアホ」


どんなに恋しい蔵の願いでも、こればかりはせえへんで。


「ええやんー。何事も経験やで経験」

「いーやーや」


…半裸で迫るんやめてくれへんか。


「じゃあ水遊びしようや」

「すいません部長、今回ウチら何しにここ来ましたっけ」


「…おかしいな。いつもやったら遊ぼや遊ぼや蔵リーンって言ってくる筈なんやけどな…、」

「……アホ」


半裸の蔵と遊べるか!
そんなアダルトな遊び、ウチは知らん。


「ええやん。ちょこーっと遊ぼや」

「しつこいで。っちゅーか腕掴むなって…きゃっ!


ザッパーン!

蔵に腕を引っ張られたこともあって、ウチは後ろを向いたまま池の中。


飛び散る水しぶき。
唖然とする部員たち。


「…えーっと、柚、スマン……な?」

「………。」


「ほ、ほんま、ほんま堪忍!」


半裸に受け止められるウチ。


びっしょびしょな自分の姿と、蔵が必死に謝る姿を見ていたら、なんかもうどうでもよくなってしまった。
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