白兎を追いかけて | ナノ






「え?くれるん?」


蔵がくれたのは、調理実習の時間に作ったらしいお菓子。


(ウチに…、ええんやろうか?)


むっちゃ嬉しいんやけど、佐倉さんのことを思い出せば胸が痛む。佐倉さんも…欲しかったんやろうなぁ。

ウチがあの場から逃げ出したから、償いと思ってくれるんかもしれん。

変な期待は…するもんやない、な。



「開けてええ?」

「ん、」


青色の小さな包みを開ければ、中に入っていたのは兎形のクッキー。

(う、うさぎさん…!)


「むっちゃ可愛ええ…」

器用やなほんまー…。


「せやろ。柚んために作ったんやから」

「……え?」

ウチんために…?


「柚は兎やからな」

あ…、それ、初めて会った日にも言われた気ぃするわ。


「今日木の下で花風見っけてな、雪被っとったこともあんねんけど白兎みたいや思ったんや」

「ウチ…うさぎなん?」

「なんか小動物っぽいやん」




うさぎ―…、な。ウチんこと考えながら作ってくれたみたいで…嬉しいなぁ。


無意味な期待が膨らんでいく。
ちょっと惜しいけど、兎クッキーを一口かじった。


「うわ、おいし…」

普通のバタークッキーなんやけど、口いっぱいに優しい味が広がって、とても美味しかった。


「ほんま?男なんになんか嬉しいわ」

「へへっ。はい、蔵も一枚」


兎クッキーを一枚持つと、蔵はそれをぱくりと食べた。


あ、なんか……、

(カレカノっぽい…かも)


「んー、普通やな。柚が作ったロールケーキの方が百倍美味いわ」


食べる仕草もかっこええ。っちゅーかエロいな…。


「なに言うてん!あんな焦げロールは比較の対象にならんわ」

「エクスタシーやったで!また作ってな」


な、なんやねん。エクスタシーて言えば全部片付くと思っとるんやろ。


「アホ。…また作るわ」


最後の方の声が小さいのは、恥ずかしかったから。一番のアホはウチ。

次は、焦がさへんようにせんとな。
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