「俺んこと嫌いって言ったやん」
「え?」
あ、えーーっと…。
言ってしもたな、確か。
あれは勢いで言ってしもたやつであって、本心やあらへん。…のに。
「むっっっっっちゃ傷ついたわ!」
「えっ、えぇぇー!」
そ、そんなに…!?
「柚に言われて心臓止まるかと思ったわ。ガラスのハートが粉々に割れてしもた」
「ほんま…堪忍な?そないなこと、ほんまは思ってへんのやで?」
「俺んこと嫌っとらんて分からせてくれんと許さへん」
「分からせるって……、」
ど、どないしたらええんやろ。
蔵との思い出をちまちまと語り出すべきなんやろうか?
いや、それは駄目や。っちゅーか面倒くさい。
…ってか待ちぃ。
嫌いやないことって言うけどウチ蔵んこと大好きやん!likeやなくてloveやで!
なんで「大好きやー!」やなくて「嫌いやないでー!」て告白せなあかんの?
あ、蔵シュンとしとる。
(可愛ええ……)
ウチは迷いに迷って、そして…。
ギュッ、と。
抱き締めてしもた。
「嫌いやないで。…な?」
蔵の体はやっぱり大きくて、ウチが抱き締めてもただ抱き付くような形になってしまっとる。
(男…やもんな)
もうええやろか?ほんま、心臓爆発するて…。
背中に回した手を離した瞬間、離れないようにと蔵に強く抱き締められた。
「もうちょっと…こんままでおって」
胸がきゅんと鳴って、鼻の奥がツンとした。
あぁきっとこれが恋なんやって……改めて思った。
この温もりがずっと続けばいいのに。なんて、叶わない願いさえもしてしまった。
- 33 -
← | →