白兎を追いかけて | ナノ

―ガサッ、ガサ


「待ち、なんしよるん」


蔵はウチの言葉に耳を傾けず、一時はごみ箱に捨てたお菓子の包みを広げている。


「駄目やて、蔵!」


まさか……、待って!ソレを、食べるなんてことだけは……!


「柚んお菓子は、ほんま美味いわ」

「っっ…!駄目やて…、そんなん。焦げたし、ごみ箱ん中入ったし」


ウチが呟く中、蔵はロールケーキをすぐに完食してしもた。


「俺は丸焦げでも得体の知れんモンでも柚が作ったんなら、食べたいんやから」


「え………あ、嘘」


私…てっきり……。


「さっきはほんまごめんな。信じてもらえんかもしれへんけど、佐倉さんと約束なんてしてへん。一方的に、メールで言われただけやて」


「………ほんま?」

「ほんまや」


「信じてええん?」

「もちろん」


「…わかったわ、信じる」

「今日は柚からしかもらわんって言ったやん、ちゃんと断ったで」


手をひらひら〜とさせる蔵を見て、そう言えば蔵は嘘は言わんくらい真面目やったなぁ、と。
嘘付くわけないなやんと今更思い出して、微笑した。


「なに笑うてん。俺は今、ブルーブルーブルーなんに」

「へ?なんで?」


蔵の表情はまさにブルーブルーブルー。

だけど拗ねているみたいで少し可愛かった。
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