白兎を追いかけて | ナノ


―タッタッタッタ


嘘付き、嘘付き。


「俺は柚がくれるんやったらそれでええ。
他のはいらんのや」



蔵の…嘘付き。



―ガラッ!


はぁ…はぁはぁ。


やっぱ、走るのは嫌いや。
こんなに息が荒くなる、苦しくなる。


今日は…、いつも以上に苦しい。


あの子を見た瞬間、嫌な予感がした。

「女の子の勘は、99%当たるもんな」



悲しいな。空しいわ。
ウチ、ほんま何なんやろ。

あの子のケーキ、美味しそうやったなぁ。

蔵は、おいしいお菓子が食べたいんや。美味しければ、ウチのやなくてもええんやから。


ラッピングしたウチのお菓子。焦げた生地が、ほんま滑稽に思えた。



―ボスッ


ラッピングされたお菓子が、手から離れ、ごみ箱の中へ落ちる。


ウチの焦げたお菓子なんかより、蔵にはあの子のお菓子の方が――…



―ガラッ!


「柚!」



(……!!)
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