白兎を追いかけて | ナノ


「えへへへへ」

どないしよどないしよ。焦げたのも忘れるくらい、嬉しいわ〜。


「雪合戦しよったみたいやけど、なに作ったん〜?」

「雪合戦?あー、…。ロールケーキ作ったんやけど少し焦」「白石くん!」


………え?


ウチらの前にいるのは、面影のある女の子。
えっと、確か…隣のクラスの佐倉さん……、や。

蔵にこん前告白して来て、アドレスを…聞いた子。



「私、白石くんのためにチョコレートケーキ作ってきたの」

「あー…ほんま?おおきに」


断る、よね?

だって…今日は、ウチからしか受け取らんって…さっき、言ったし…。


心臓が、疼く。

怖いて思うのは…何で?


笑顔で満ち溢れている佐倉さんに、嫌な予感がする。


…ウチの外れて欲しい勘は、見事に当たってしまうことになる。


「だって、ね。昨日メールで約束したもんね」


(……え?)


「ウチと白石くんのお菓子、交換してくれるって」



(何なん…それ)


そんなん…嘘やんな?
そうやろ、蔵…?

蔵は、苦々しく笑った。


「せやった…な」


う、そ………。


なんで?なんで否定せんの?
ほんまに約束してたん…?



「はいっ、これ」


差し出されたのは美味しそうなチョコレートケーキがラッピングされていた。

蔵は、受け取るん?
自分が作ったの、あげるん?



い…嫌や、見たくない。



「蔵の…嘘付き」


ボソリと悲しげに吐き捨てて、ウチはこの場から逃げ出した。
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