目まぐるしく変化していた日常。悲しいことも苦しいこともたくさんあった。せやけどその想いに苛まれたのはウチだけやない。蔵と光だって、…ううん蔵と光の方が苦しんだし傷ついた筈。
そしてやっと今、平穏が訪れた。
「そんなことがあったんやね」
「うん、黙っててごめんな」
「いや私も、力になれなくてごめんね」
友人の結衣に事の経緯を話終えると、とても驚いたような、悲しそうな顔をしていた。心配してくれてありがとうな。ウチは大丈夫やで。
「財前くんとはもう大丈夫なん?」
「…光な。めっちゃ謝ってたわ。蔵は本気で殴ろうとしてたんやけど…ウチが」
「…止めたんやね」
「代わりに殴った」
「…殴ったんかい」
光に悪気は無かったと、そう思う。ウチを好いてくれていた、ただ、それだけ。
「発情期だった。ただそれだけ…」
「…その寛大さ、柚のええとこよ」
蔵も何だかんだ言いつつ許してくれたわけだけど、問題が全て片付いたわけやない。
「で、その引っ掻き混ぜるようなことした写真部の子はどうするん?」
「それやねん」
「うん」
「今からとっちめてくるつもりなんやけどどう思う?」
「頑張る君を応援します」
わざわざ蔵を苦しめるような事をした彼女には、痛いお仕置きが必要や。
狩人の目をしたスーパー少女は、電光石火の速さで走り出した。
「今走り抜けた奴…できる!」
すれ違い様に謙也が何か言った気がしたのだか無視しておいた。
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