「ごめん、蔵、ごめん。ホンマに…ごめん。ウチが…ウチが全部全部悪かった。ひぐっ、財前くんの気持ちに対して…中途半端に向き合って、蔵を傷つけた……っ」
柚は泣いていた。
「ふぅっ…もう遅いって分かっとる。今更なんやねんって、無視してもらって構へん。こんな風に………、しつこいことして、ごめん」
雨なのか涙なのか、交わった液体が地面に落ちている。
俺はまた、柚を…。
「……好きやねん。まだウチこんなにも、どうしようもないくらい蔵が好き。ひっく…ぅぇ、沢山傷つけたんに、ごめん。他の女の子と蔵が付き合うたら……ウチ、ウチ…っ」
胸の底から湧いてくるこの感情。
衝動に身を任せ、左足を踏み出し腕が伸びる。
「蔵と、別れたくない…っ!お願いや…っ、ずっとずっと傍におって…。ウチは蔵が……ぅぅっ、大好…、んっ」
言葉の続きは聞けへん。雨に濡れて湿った唇が重なる。深く深く強く、貪欲に口付けた。
かき抱き締める。小さなこの存在が、離れていかんように。放してしまわんように。
こんな雨の中、俺に謝るために待っとってくれたんか?
寒かったやろ?寂しかったやろ?
「ごめんな、……ごめん、ごめん」
「蔵っ……」
柚を失って、世界は一気に色褪せた。モノクロの世界に心は萎れた。
柚も、一緒やったんやな。俺と同じように想っとってくれた。ありがとう。ホンマにありがとう。
「大好きや柚。世界一…、宇宙一愛しとる」
想いが再び、交わる。
- 262 -
← | →