白兎を追いかけて | ナノ





「ごめん、蔵、ごめん。ホンマに…ごめん。ウチが…ウチが全部全部悪かった。ひぐっ、財前くんの気持ちに対して…中途半端に向き合って、蔵を傷つけた……っ」


柚は泣いていた。


「ふぅっ…もう遅いって分かっとる。今更なんやねんって、無視してもらって構へん。こんな風に………、しつこいことして、ごめん」


雨なのか涙なのか、交わった液体が地面に落ちている。
俺はまた、柚を…。


「……好きやねん。まだウチこんなにも、どうしようもないくらい蔵が好き。ひっく…ぅぇ、沢山傷つけたんに、ごめん。他の女の子と蔵が付き合うたら……ウチ、ウチ…っ」


胸の底から湧いてくるこの感情。
衝動に身を任せ、左足を踏み出し腕が伸びる。


「蔵と、別れたくない…っ!お願いや…っ、ずっとずっと傍におって…。ウチは蔵が……ぅぅっ、大好…、んっ」


言葉の続きは聞けへん。雨に濡れて湿った唇が重なる。深く深く強く、貪欲に口付けた。

かき抱き締める。小さなこの存在が、離れていかんように。放してしまわんように。


こんな雨の中、俺に謝るために待っとってくれたんか?
寒かったやろ?寂しかったやろ?



「ごめんな、……ごめん、ごめん」

「蔵っ……」


柚を失って、世界は一気に色褪せた。モノクロの世界に心は萎れた。
柚も、一緒やったんやな。俺と同じように想っとってくれた。ありがとう。ホンマにありがとう。



「大好きや柚。世界一…、宇宙一愛しとる」




想いが再び、交わる。
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