辺りは真っ暗。更に視界を悪くするように降り続ける雨。
柚を、見つけられへんかった。
こんなにも探し回ったのにどこにもおらへん。なんやねん俺……ホンマ何なん。柚のことなら全て分かっとるつもりやった。どこに隠れたって見つけれると思っとった。
帰路につく。
早く柚を見つけて、想いを告げんと全てが手遅れになる気がした。せやからどうしても見つけたかった。
柚………。
自宅。運良く家族はおらへん。こないずぶ濡れで弱り切った姿、見せられへんもんな。…良かった。
家の前に、小さな人影があった。俺と同じで傘は差していない。濡れきったその姿すら同じ。
四天宝寺の制服を纏った女の子。
彼女がこちらを向いたとき、幻覚かと疑った。
「………く、ら」
「柚……?」
雨に濡れた女の子は、驚いたように俺を見上げていた。
嘘や、何で、どうして。
どうして柚がここにおんねん。雨に濡れて、なんで俺の家の前におるん?俺を、待っていた……?
今すぐに会いたかった筈なのに、驚きのあまり動けへん。言いたいことが仰山あった筈なのに、言葉が出てけえへん。
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