白兎を追いかけて | ナノ




辺りは真っ暗。更に視界を悪くするように降り続ける雨。


柚を、見つけられへんかった。

こんなにも探し回ったのにどこにもおらへん。なんやねん俺……ホンマ何なん。柚のことなら全て分かっとるつもりやった。どこに隠れたって見つけれると思っとった。


帰路につく。
早く柚を見つけて、想いを告げんと全てが手遅れになる気がした。せやからどうしても見つけたかった。


柚………。


自宅。運良く家族はおらへん。こないずぶ濡れで弱り切った姿、見せられへんもんな。…良かった。

家の前に、小さな人影があった。俺と同じで傘は差していない。濡れきったその姿すら同じ。
四天宝寺の制服を纏った女の子。

彼女がこちらを向いたとき、幻覚かと疑った。



「………く、ら」

「柚……?」



雨に濡れた女の子は、驚いたように俺を見上げていた。



嘘や、何で、どうして。

どうして柚がここにおんねん。雨に濡れて、なんで俺の家の前におるん?俺を、待っていた……?

今すぐに会いたかった筈なのに、驚きのあまり動けへん。言いたいことが仰山あった筈なのに、言葉が出てけえへん。
- 261 -


|
戻る
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -