天気は雨。生憎の土砂降り。午後から降り出したため傘はない。
この空が柚のようで、柚が泣いているんやないかと思うと……。
雨に濡れながら、俺は。
走る、走る、走る。
「柚は帰ってへんよ?どこ行っとるんやろー……っていうか白石くん!傘も差さずにどないしたん!びしょ濡れやん!」
「ええんです、急いでるんで。ほな失礼しました」
家にはおらん。
電話も繋がらへん。柚が行きそうな場所にもどこにもおらへん。謙也にも桐島にも連絡をしてみたけれど一緒やないらしい。
柚、柚、柚。
どこにおるんや。一人で寂しくしとるんやないんか。
おまえはな、女の子やねん。スーパー少女言うても小さな小さな一人の女の子なんや。
なぁ、柚。別れようなんていうてごめん。突き放してごめん。
一生懸命おまえを諦めようとした。せやけど無理やった。染み付いた柚の記憶も幸せも想いも、消すことなんて出来へんかった。
好きやねん。好き。めっちゃ好き。
もし柚が、俺のことをもう必要としなくなっていても。気持ちが薄れていても。他のヤツに気持ちが移ってしまっていても。
全てを引き戻す。
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