――……
「知ってる?花風さんと白石くん別れたらしいで〜」
「ホンマなん!?チャンスやんか!」
嫌みったらしく噂をする女子生徒の声。どうして、バレてるのか、なんて。考える気力も残ってへん。
(いつも一緒におったもんな…)
朝も、昼も、夕方も。隣には絶対蔵がおった。隣でいつも笑っていてくれた。幸せを与えてくれた。
けれど、君は今。
「えーっ、白石くん面白〜い」
「せやろ?」
もう、此処にいない。
あれから蔵とも光くんともまともに対話をしていない。ウチは光くんを避け、蔵はウチを避ける。光くんと蔵は目すら合わせん。負の連鎖。なんや、これ。
あの日、別れを告げた蔵を追いかけて泣きつけば、何か変わっていたのかな。「好き、お願い、離れんで」って、懇願すればこんなことにはならんかった?
せやけど、今更やんか。キスされたことは言えずに別れの危機になったら言えるんか、って。自己中すぎる。
「柚、おまえ…白石と、」
「なんやねん謙也」
「別れたって、嘘、」
「ヘタレ!アホ!変態!」
「…柚、…ん?俺いつから変態キャラになったん」
「『さくら前線』っちゅー恋愛小説で『ケンヤ』っていう奴が出てくんねん。こいつがまた変態でな」
「名前が一緒なだけやんか。俺に関係あらへんやろ。ちゅーかどんな風に変態なん?ソイツ」
「主人公がメイド服来てハッスハスしてる」
「どんな本読んでんねん!!」
ウチって話を逸らす天才なのかもしれん。…いや、ちゃうなぁ。謙也がアホなだけか。
蔵に、謝りたい。
ちゃんと、謝りたい。
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