白兎を追いかけて | ナノ






「う、そ…」


え……、待ち。

嘘やろ、あり得ん。


「ありゃ、珍しい」

隣で呟く優衣の声も耳に入らん。

だって、信じられへんもん。


ぷすぷす――…。


「ウチが…焦がしたやて?」


人生歩み続けて15年弱。
焦がしたことなんて、一度もなかった。


それやのに……、

「蔵にやらなあかん、こんなときに」


嘘……やん。

がくりとうなだれる隣で、悪魔の囁き。

「そりゃあんなにわたしと生クリーム戦争してたら、焦げて当たり前やろ」

「優衣のお菓子、焦げた?」


「わたしはタルト生地作ってたからな、ちょっと焦げても平気やもん」

せやけどロールケーキはふわふわ命やからな、キツいなぁ。…なんて悪魔はぶつぶつ呪文を唱えよる。


(ウチの…ロールケーキ)


蔵にあげるんや。どないしよ、ほんまどないしよ。

窮地に立つとはまさにこのこと。

絶体絶命。

あぁ、優衣に生クリーム投げつけるあのときの自分を説教してやりたいわ。作り直すにも時間はない。


ど、どないしよう――…!
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