――…
光くんとの最初の出会いはやっぱりテニス部でやったよね。
ごっつ無愛想な後輩やなーて思っていたけど、天才という異名に縋るでもなく努力していて、そして実は可愛くて。
適当に三年生をあしらっているけど、みんなのことが大好きで。せやからみんなにも愛されていて。わたしはそんな光くんが大好きや。
いつもいつも助けてくれてありがとう。
光くんがいなかったら、ウチは蔵に告白することは出来へんやったやろう。
ウチは光くんにたくさんの恩返しをせなあかん。
せやから――…、
ばんっ!
「光くんっ…!」
ハァ、ハァと息が乱れる。
もしかして、浪速のスピードスターより速かったかも。称号剥奪やで謙也!って、今はそれどころやあらへん。
「うわ…柚先輩速。怪物ですか?」
「(…ぴきっ)」
ヘッドホンで音楽を聞いていた光くんが外しながらにそう口にした。我慢や、我慢やでウチ。
せやけど、いつも通りの光くんに安堵したのも事実で。
「俺のために急いで来てくれたんやて思うと、めっちゃ嬉しいです」
「っ、」
なんやねんその切り替えは。
また、や。どうしてこんなに優しく笑うんやろう。甘く言の葉を囁くんやろう。
不覚にもドキリとする。…つい流されそうになってしまう。
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