白兎を追いかけて | ナノ


蔵と二人で登校するのは久しぶりで、調子に乗って手を繋いだら沢山の人の視線を集めてしまった。

恥ずかしくて俯いて歩いていると、蔵に頭をくしゃりとされて「今更何照れてんねん」と笑われた。


あーもう、蔵かっこよすぎ。


胸いっぱいに幸せで、るんるんでローファーから上履きに履き替える。

そのまま教室へと歩き出すウチの隣に蔵がいないことにはすぐ気付いた。

振り返ると蔵は未だに靴箱に立ち尽くしていて。…靴箱に入っていたなにかを、見ているようだった。


(ラブレター……かな?)


蔵、モテモテやしな。一日に一通二通は当たり前なんやろな。
ウチはこの前一通貰っただけで大騒ぎしよったんに……。

薮内くん、最近見てへんな。




「お待たせ、柚」

「あ、うん。ええよ」


紙らしきものをぐしゃりと丸めてポケットに入れる蔵。

…?…珍しいな。

蔵は根がええ奴やから、どないな人に告白されても無碍にしたりせん。蔵なりに、丁寧に断る。せやから女の子はフラれても蔵に恨みは持ったりせえへん、のに。

「どないしたん?」

「…や、なんも、あらへん」


顔、青ない?


「でもめっちゃ苦々しい顔、」

「柚」

「あ、はい」

「……信じとるから」


「う、うん?」


なんのことを言っているのかさっぱり分からず、ただ、頷いた。

ウチは気付けてへんかった。
蔵が今までにないほどにウチを真剣に見つめていることも、蔵の肩が、腕が、震えていることにも。




星屑よさようなら
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