白兎を追いかけて | ナノ






――ガラッ、


空き教室まで、無理やり蔵ノ介を引っ張った。…少し埃っぽい。

蔵ノ介はウチより断然力が上で、振り払おうとすれば振り払えたのに、彼はついて来てくれた。

優しい人。

そしてあなたはいつも、


「なにか、あったん?」

第一にウチの心配をしてくれる。


ねぇ蔵ノ介。大好きだよ、大好きなんだよ。ウチには蔵ノ介しかいらんのやから。


「柚、愛してた」


遠くになんて…行かないで。



「キスして」

「……え?」

「キスして、今ここで」

「柚…?」


心配そうに、その綺麗な瞳が覗き込む。たったそれだけで、泣きそうになる。


「お願い…キスして?」


今、無性に蔵の温もりが欲しいの。
なにも考えられなくなるぐらい、窒息死するぐらいに。


蔵のシャツを引っ張って、キスをねだる。

なにも聞かないで。

今は、…お願い……。

今はなにも聞かずにキスをして欲しいの。

涙目で懇願するとふわり、と。壊れ物のように優しく抱き締められた。

蔵ノ介は何か言いたげに口を開いたけれど、ウチの気持ちを察してか言葉にはしなかった。


ありがとう、そしてごめん。


「苦しい言うても、離さんで」


甘い甘い言葉に拘束された後、温かい唇が降ってきた。

侵入する舌。淫らに水音をたてて、蔵ノ介の舌が激しく動く。

ウチはひたすらにそれに応えていた。


最初は慣れなかったこの感覚も、今では堪らなく好き。蔵ノ介に求められてるんだって、感じるもの。
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