「やって来たわ。ここ一番の大勝負…」
戦闘器具は泡立て器。
防御器具はボウル。
本日の戦争内容は…、いかに愛を詰め込み超絶華麗でデリシャスな作品を作り上げること!
皆が敵や。みんな目を光らせとる。
気を抜いたら負けや。
どんな罠を仕掛けてくるか分からん。空中から、地面から、いかなる攻撃も防ぐんや。
「いざ、cooking!」
「…なにしてんの」
泡立て器を構えているウチを冷めた目で見つめる優衣。
あれ?この温度差なんやろ。
「く、蔵がお菓子頂戴言ったんやで!これは張り切るしかないやろっちゅーにんっ」
「いや…でも戦争って、」
「見てみぃ、優衣。周りの女の子はみんな誰に作りよる思う?」
お菓子作りをしながらも、女子の視線は一点に集まっている。
視線の先には、やっぱり。
「んー…白石くんやね」
「そうなんや!負けたくないんやー!」
「いいやないの、そないに対抗意識燃やさんでも。柚は白石くんに頂戴って唯一言われてるんやから」
「せやかて…、」
「優越感に浸っとき」
……違うんやもん。
「蔵が欲しい言うたんは、ウチが超絶スーパーミラクルにお菓子作りが上手いからやもん」
「……柚。なんかちょい腹立つんは気のせいやろうか…」
「ウチが超絶スーパーハイパーミラクルに上手くなかったら、蔵だってあないなことは言わん」
「…うん、悲しいな、分かるわ。でもやっぱ腹立つわ。そしてなんか増えとるわ」
蔵はウチが作るお菓子が食べたいっちゅーより、美味しいお菓子が食べたいってだけやねん。
ウチがお菓子作りが上手くなかったら、手合わせられておねだりなんて絶対してきぃひん。
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