白兎を追いかけて | ナノ





昨日と同じ、この感覚。
息が詰まりそう。


「あ、……えと」

「ほな」


光くんが去っていく背中を直視することができなかった。

肩が、指が、震える。


昨日の光くんの真剣なあの瞳を、唇の感触を、思い出してしまった。

どうしよう、どしようどしよう。

ウチは、どうしたらええの?


「どないした?柚?」


振り返ると、蔵ノ介が心配そうに見つめていた。

瞳が、揺れる。
駄目だ、駄目だこんなウチ。

光くんに恋愛感情なんて抱いてないのに、なして…なしてこんなことになったんやろう。
蔵ノ介に、隠し事をするやなんて嫌なのに……。


ウチは蔵ノ介を裏切っている?

違う、そんなこと……ない。


だって、好きなのもキスしたいのも蔵ノ介だけ。

温もりを求めるのだって、蔵ノ介だけなんやから。



「蔵…ちょっと、来て」


「柚?」


腕の裾を引っ張って、早足で進む。


このとき、ウチは必死で、とにかく蔵ノ介を手放したくない一心だった。
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