白兎を追いかけて | ナノ






―――…


雨上がりの午後。ちょっとジメジメしたこの気温が、ウチは嫌いやったりする。

窓から眺めるグラウンドは幾つか水溜まりが出来ている。そんな当たり前な光景をひたすら眺めていた。


なしてあんな夢を見たんやろう。たかが夢、されど夢。気にならないと言うと嘘になる。


「ほんなら誰かー、一行目の英文訳し〜」

「はい、ウチやる」

「花風、おまえが発表やなんて珍しいやんか。明日は竜巻か?タイフーンか?」

「先生、竜巻もタイフーンも意味一緒です」

あんたほんまに英語教師か。

「はっはっは!冗談や冗談!ほな訳してみ」

前の席の蔵に、ウチはいつになく熱い視線を注いだ。

蔵ノ介、あのね…実は昨日、光くんに告白されてん。
好きって言われた、ビックリしたよ。やって蔵にも言ったとおり世界がひっくり返ってもありえんって思いよったんやから。


「It seems to me that he knows nothing about it.
私には彼がそのことを何にも知らないように思われる」

ねぇ蔵、光くんとキスしてもうた。

一方的な行為だった。せやから蔵に言ってもウチは咎められないって思った。
やけど光くんの言葉が引っかかってあなたには言えへんの。

「さすが花風や。ほな次の例文も頼んだで」


蔵がもし知ったら、どないな顔をする?


「The results fell short of my expectaーtions.
その結果は私の期待に反していた」


別れるやなんて言わへんよね?
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