白兎を追いかけて | ナノ






光くんが、ウチのことを好きやなんて、…気付かなかった。

やって、気付くわけない。熱烈なアピールやアタックを受けたわけやないんから。


でも…、蔵は気付いてた?


「財前が柚に気ぃあるかもしれん」


光くんの気持ちに気付いてた?


それがほんまならウチ、めちゃめちゃ悪者やんか。蔵は真剣にウチに言っていたんに…大笑いして。

(…そら蔵も怒るわ。)



これから、どないしよう。

光くんとどう接していけばええんやろう。
光くんはウチと蔵の関係を壊す気でおる。しかもキスされたし、近くにおらん方がええよね…?

今までお世話になった分、光くんを避けるのは申し訳ない。
…せやけど、こればかりはしゃあないねん。

光くんには悪いけど、ウチは蔵との関係の方が大事やねん。



「柚、待たせて堪忍〜」


思い詰めるウチの前にいつの間にか蔵が立っていた。
当たり前なんやけど、いつもと変わらないことにホッとする。

「お、おかえり…」

「オサムちゃん職員室おらんなぁ思うてごっつ探したわ〜。そしたら喫煙部屋におってな、見つかるか!ってな」


キスをされたこんなウチに、いつも通り笑顔を向けてくれる蔵に罪悪感が募る。


「…っごめんなさい、蔵」

「柚?」


蔵の胸に飛び込んで、必死に気持ちを伝えた。
ウチはとんでもないことをした。もし言うてしまったら、蔵の笑顔を壊してまうかもしれない。
せやけど…蔵に隠し事をするのはもっと嫌だ。


「昼休みは…ごめん」

「あぁ、もうええて。俺もごめんな、いきなりあないなこと言われても困るよな」



謝ることはそれだけやない。ちゃんと言わな、キスされたって。



「蔵……、あのね」
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