“キス一つで崩れてまいそうな関係”
ウチと蔵の関係は、脆いって言いたいん?
……違う、そんなこと、ない。
「こないなキス一つで崩れるわけないやろ」
「さぁどうですかね。白石部長めっちゃ独占欲強いですから、自分の大好きな柚先輩汚された思うて怒りますで?きっと」
「そら蔵は怒るやろ。光くんにも、ウチにも」
「悲しむですやろ、白石部長」
「ほんなら何でするん…!」
光くんは、冷たくあしらいながらもテニス部が好きやと思ってた。…っ今でも思ってる。
蔵のことやって、大切なチームメイトって思ってる筈、なして平気で傷つけるようなことが出来…――
「そこまでして、柚先輩を奪い取りたいからや」
(…っ!?)
強気な瞳に見つめられて、逸らせない。どうしてそんな目でウチを見るん。
愛しそうにウチを見らんで。光くんはウチが好きなんやって、認めたないねん…。
「最後に一つ言うときます」
「え、…な、なに?」
「独占欲強い人って、自分のモノ汚されたとき、嫌になって捨てたくなるもんなんですよ」
それを言い残して、光くんは部室から去っていった。
捨てる?蔵が、ウチを……?
ありえへん。蔵は、そないなことするヤツちゃう。
違う……筈。
でも…でも、もし。万が一、それが…ほんまやったら。
薮内くんに抱きしめられる光景を見た蔵は、とても悲しそうやった。
キスしたことを知ったら、どない顔するんやろう。
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