「なして文化祭の日、この手で柚先輩の背中を押したんでしょうね」
そうや。光くんは、屋上でもホストクラブでも、何度もウチの背中を押してくれた。
「きっとよっぽど柚先輩の笑顔が見たかったんですわ。白石部長の気持ちなんて知ってましたから。どちらかが想いを告げればくっつくって分かってましたから」
光くんの悲しそうな顔を見ると、変な感情が湧いてしまう。同情しているつもりはないんやけどウチ、同情してる…きっと。
「なして、ウチなん?」
もっと可愛い子、光くんの学年にゴロゴロおる筈やろ。
「俺と正面から向き合ってくれる人なんて柚先輩ぐらいです。遠慮なしに怒鳴り散らしてくれる女も、タックルかましてくる女も、柚先輩しかおらんのです」
「………っ、」
どないしよう、どないしたらええねん。ウチは告白されたん?
いつかの薮内くんにもこんな顔をさせてた。またウチは、誰かを傷つけなあかんのかな?
「あのな、光く…」
「なして俺が柚先輩にキスしたか分かります?」
「………え?」
このあとの、光くんの言葉に、心臓が止まるような思いをすることになる。
「やって先輩ら、キス一つで崩れてまいそうな関係やないですか」
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