蔵は安心したように笑って、ウチがときめくのを計算してるのかそのまま抱き寄せられた。
「なぁ柚」
「ちょ…ここ学校」
「財前にあんま近付いたらあかんで」
「…え、」
なんで、光くん?光くんはすごくすごくすごくいい人なんに。
そりゃあ昨日はあないなことがあったかもしれんけど、ただ気まずいなぁってだけで、関係あらへんし。
「蔵、ウチ蔵が言いよる意味が分からん」
光くんにはめっちゃお世話になってるんやで。危ないから近付くなって、なして?
「あかんもんはあかん」
「余計意味不やんか」
「今はちょっと、俺の傍から離れたらあかんで」
「そ、そりゃあ蔵の隣にはおるけどさ」
光くんにいっぱい助けてもろたの、蔵にもいっぱい言うたやんか。
ウチは光くんにいっぱいお返しせなあかんねん。近付くなとか、蔵に決められたない。
「柚、なにもずっとって言ってるわけちゃう。今だけ、」
「嫌や!」
蔵の言葉を遮って否定する。
なしてそんな困った顔してんねん。ウチがなにかおかしいことでも言うてるん!?
「柚……、頼むわ」
それでも引き下がるわけにはいかん。
「嫌や」
「柚!」
「嫌!」
なしてそないなこと言うん。確かに蔵は昨日の最中に邪魔されて、怒ったかもしれんけど。
なしてそれがウチが光くんに近付いたらあかんことに繋がるん!?
光くんはチームメイトで、可愛い可愛い生意気な後輩で……。
悲しいこと、言わんといてよ。
「おーっす二人共!めっちゃええ天気やなぁ!二人の顔も晴れ晴れと………!…してへんがな。え、ちょ、この険悪のムードはなん?もしややっと来よったわ!の初喧嘩なん?」
「………。」
「………。」
一編くたばれ、アホ謙也。
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