自分の席へ戻る蔵を見つめながら、思う。
「「お好み焼きより好きやわ」」
(…………。)
え?今、絶対声被ったわ。
誰やねん!乙女の心の中を読むんは犯罪や、犯罪!
このエスパーめ!
振り返ると、思わずフリーズ。
「…ちわ、先輩」
「ぴ、ぴかりん!」
三年生の教室だというのに、そこにいるのは財前光。
バリバリ二年生だ。
そんな光くんの登場によりクラスの女子は黄色い声を上げた。
光くんもモテるもんね、かっこいいし、なんかかわゆいし。
「お好み焼きより白石部長っすか。きもいっすわ、先輩」
「だからっ!そーいうことは大きい声で言わんといて!」
「先輩の方が声デカいっすわ」
た、確かにそうかも…。
…って生意気な!
「なにしに来たん。ウチに会いに来たんやろ。あー先輩嬉しゅして涙出てくるわー」
棒読みで言い放つと、即答で返ってきた。
「そうですわ」
「………。」
え?光くんってこんな可愛い可愛い後輩くんやったっけ?
うちの浅はかな記憶では生意気毒舌後輩ってしか残ってへんわ。
「嘘ですわ。頼んますから、そんなギラギラした目で見らんといて下さい」
「ギラギラちゃうわ!」
獲物を捕らえるようなギラギラした視線を恋する乙女がするわけないやろ。
「手首がちょっと腫れてるんですわ。シャーペン持つときも違和感あるんで、テーピングしてもらえません?」
「あ、うん、いいよ」
光くんが怪我なんて、久し振りやなぁ。
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