白兎を追いかけて | ナノ




「おぉ柚、おかえぶはっ


砂浜をひたすら走り、水着姿の蔵へと速度を落とすこともせずに飛びついた。


「え?ちょ、どないしたん、柚。このおいしい展開はなんやねん」

「うぅーっ…蔵ー…」

ぎゅううっと蔵の腰に腕を回して抱き付く。
やだやだやだやだ。
蔵はウチのや。蔵の彼女はウチや。

誰にもなびかんといて。瞳にウチしか映さんといて。他の女の子に携番なんて教えちゃやだ。オイルなんて塗らんといて。


「どないした?ほら、言ってみ」

「…蔵がかっこよすぎるねん」

「は?」

「今日はずっと、一緒おって」

「当たり前やろ。言われんでもそうするわ(害虫掃除とか害虫掃除とかな)」

「他の女の子、見ちゃヤダ」

「ん?当たり前やがな。俺には柚しか見えてへんで」

「…我が儘言うて、ごめん」

「なにいうてん。柚の可愛い我が儘、聞きたいねん」


(………っ、)

甘美な台詞に、思わず力が抜ける。

可愛ない。…ただの醜い嫉妬やねん。


「柚、そろそろ離れてくれんか」

「……あ、せやね…堪忍」


こないな所でなにやってんねやろウチ。蔵も困るに決まっているのに。蔵の肌から惜しみながら離れる。と同時に蔵の顔が近寄って来た。

「そないな格好で抱きつかれたら、襲いたなってまうがな」

「………っっっ!」


一瞬、思考回路を奪われた。


あかんわ。今、襲われていいて思ってしもうた。
紅潮する頬が、疼く身体がその証拠。


その体に包まれたい、蔵に抱かれたい。


そんなこと、本人に絶対言えへんのやけど。




「熱々なところ悪いんやけどお二人さん、俺ら早よ海ん中入りたいっちゅー話」


「「……………。」」


部員全員が、見ている。

…みんなに、見られてた?


(…………、)


ギャ―――――――!
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